高精度と省エネを両立し、
ものづくりの根幹部分から
持続可能な社会を実現する。

PROJECT概要

高精度と省エネを両立する「Green-Smart Machine」(グリーンスマートマシン)は、環境意識が高まる昨今の情勢においてようやく正当な評価を受けた側面がある。プロジェクトを成功に導くにあたっては、その特徴を、広く、深く、正しく伝える必要があった。

TALK MEMBER

研究開発部 知能化・基礎技術開発課 2010年入社

山本さん

サーモフレンドリーのほか、エコスイートプラスの前身のエコスイートなど、入社以来一貫して、省エネ技術の開発に携わっている。「 “いいもの”ではなく、“お客様にほしいと思ってもらえるもの”をつくる」がポリシー。ほぼ皆勤賞で参加する展示会では、顧客の声に真摯に耳を傾け、それを技術開発に生かしている。

ESG推進室 2008年入社

藤瀬さん

入社2年目にソリューション開発センターで展示会準備等に携わった後、研究開発の道に進む。また、働きながら大学院に通い、2020年3月に電気・機械工学の博士号を取得した。現在はESG推進室に所属し、オークマとしての脱炭素計画を策定・推進。計画の進捗は統合報告書などで非財務情報として開示している。

STORY 01

20年以上前に蒔いた種が、
環境意識の高まりで芽を出す。

温室効果ガスの実質的な排出量がゼロとなった状態を「カーボンニュートラル」といい、日本を含む120以上の国と地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げている。世界的な潮流を受け、オークマでも主要生産拠点の国内3工場で、自動化および工程集約による高い生産性、高精度加工を実現した上でエネルギー消費を削減する取り組みを進めている。さらに、太陽光発電の設置や再生可能エネルギー由来の電力への切り換えにより、2022年10月からカーボンニュートラル工場とした。そして、環境対応に貢献する自社製の知的工作機械を「Green-Smart Machine」(グリーンスマートマシン)と定義し、全面展開することとなった。

「Green-Smart Machine」(グリーンスマートマシン)に搭載された特徴的な技術として、「サーモフレンドリーコンセプト」と「ECO suite plus」(エコスイートプラス)の2つが挙げられる。前者は “温度変化を受け入れる”という考えのもと、機械を予測可能な方向に伸縮させ温度の伝わり方を均等にすることで、素直な熱変位を正確に制御。特別な機体冷却装置や過度な空調管理なしでも高い精度安定性を発揮する。後者は機械が自律的に判断し不要なユニットを止めるアイドルストップ機能や、消費電力・二酸化炭素排出量を“見える化”するモニタを搭載した省エネシステムだ。

実は、プロジェクトの種は20年以上前からあった。「サーモフレンドリーコンセプト」の開発が2001年、「ECO suite plus」(エコスイートプラス)の前身の「ECO suite」(エコスイート)の開発が2014年、それらが進化し「Green-Smart Machine」(グリーンスマートマシン)の形になったのが2022年。オークマのこの取り組みはかなり時代を先取りしたもので、環境意識が高まる昨今の情勢においてようやく正当な評価を受けた側面がある。プロジェクトを成功に導くにあたっては、「Green-Smart Machine」(グリーンスマートマシン)の特徴を、広く、深く、正しく伝える必要があった。

STORY 02

新たな時代のニーズは何なのか。
それをとことん突き詰める。

「省エネ性能を追求しすぎると、生産品の加工精度が落ちてしまうのでは?」と懐疑的な見方をする顧客は少なくない。自動車メーカーや金型メーカーなど、オークマの工作機械の納入先はさまざまだが、ときとして髪の毛の10分の1以下の精度を求められる。「省エネなんて二の次、何よりも精度優先だ」という考え方も分からなくはない。研究開発部の山本は、そんな固定観念を覆し、高精度と省エネを両立した上で顧客が安心して使用できる製品を提供することにプライオリティを置いた。

加工物は機械周囲の温度変化や機械から発生する熱、あるいは加工で発生する熱によって、その精度が大きく変化する。「サーモフレンドリーコンセプト」では、機械設計と制御技術を融合し、素直な熱変位を正確に制御することで安定性を担保する。顧客は特別な対策を施すことなく、通常の工場環境で高精度を実現できるのだ。アイドルストップ機能「ECOアイドルストップ」についても、工作機械が有する情報を徹底管理し、確実に精度に影響が出ないタイミングで停止するようにした。

また、精度とは別に意識に関する課題もあった。電気や二酸化炭素は目には見えない。山本は「ECO suite」(エコスイート)の開発に携わっていた際、「消費電力や二酸化炭素排出量が車の燃費計のように見えたら、工作機械の省エネ意識も高まるのではないか」と考えた。さらに、ただ見えるだけではなく、記録できる機能まで標準機能として盛り込んだ。工作機械は一般家庭の電化製品とは比べものにならないほどの電気を使う。省エネ意識が高まれば、それに比例して省エネ効果も相当大きくなると、彼は10年以上前から確信していたのだ。

愚直なものづくりがオークマのポリシーだ。「こんなものでいいだろう」では決して世には出さない。新たな時代のニーズは何なのか。それをとことん突き詰めれば、いずれ必ず評価されることになる。

STORY 03

環境貢献に関わる情報が、
今、社会から求められている。

一方、ESG推進室に所属する藤瀬は、自社の脱炭素計画の策定および推進、また、計画の進捗を統合報告書などで非財務情報として開示している。非財務情報とは、企業が株主や債権者などに対して開示する情報のうち、財務諸表に記載されていない情報のことだ。国際的な温室効果ガス排出量算定ルールである「GHGプロトコル」に従い、バリューチェーン(ビジネスフローの中で創出される価値連鎖)全体での温室効果ガス排出量を算定する。そして、その情報は財務諸表の会計監査と同じように第三者機関の検証を受けることになる。

温室効果ガス排出量を算出したとしても、売上や利益には直接つながるわけではない。当初は、社内の関係部署や顧客からデータ提供等の協力がなかなか得られなかった。また、オークマの工作機械は顧客ごとに仕様が異なっている。使用状況に合わせた算定は現実的ではなく、それらを一般化するためのルールづくりに苦労した。

今後は、より環境負荷の低い工作機械の開発・製造が求められるようになるだろう。だからこそ、常日頃から非財務情報を取り扱い、顧客や株主、従業員といったステークホルダーに対し発信する藤瀬の果たすべき役割はとてつもなく大きい。

工作機械はマザーマシンと呼ばれ、ものづくりの根幹部分から持続可能な社会を実現できる。ものづくりの根幹部分から持続可能な社会を実現する。これほどやりがいのある仕事はないのではないか。山本と藤瀬はともに、そう感じている。「Green-Smart Machine」(グリーンスマートマシン)はまだまだ発展途上の工作機械だ。高精度と省エネを両立するコンセプトはそのままに、顧客がオークマの工作機械を選ぶだけでさらに環境貢献できるような次元にまで昇華させるべく、彼らの挑戦はこれからも続く。

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